1/15(月)発表 小野寺【レビュー】会話の流れの差し戻しに関する調査
小野寺です。ブログ更新が遅れてしまい申し訳ありません。
1/15に行った発表について報告させていただきます。
先日の発表では、夏季に行った「差し戻し」を対象とした調査を基に考察しました。調査は、会話が「予測的」に進んでいない、すなわち「遡及的」に会話が進む時、どのような発話がなされ、その発話はどのような機能を持つのか、ということに注目して行ったものです。
「遡及的」な連鎖を生じさせる発話には、聞き返しや差し戻しが挙げられます。今回の調査では、コーパスへの遡及的連鎖タグ付与に向けてその基準を明らかにしようとした鈴木・山本・鈴木・伝(2014)を援用しました。
聞き返しは他者開始修復の観点から研究が進められている一方、差し戻しについては出現数が少ないこともあり、鈴木ほか(2014)においても引き金等の特徴が明らかとなっていませんでした。また、聞き返しのように直前の発話に戻るのではなく、さらに前に戻るような発話の実態に疑問を持ったことから、今回は差し戻しも他者開始修復の1つであると仮定して考察しました。なお、今回は1回の発表であることを踏まえ、先行研究概観・調査・考察というオーソドックスな発表形式としました。
●調査方法
他者修復開始の観点に基づき、差し戻しの引き金・出現位置・発話者等の諸特徴を明らかにする。
その際、一定数トラブルが生じる(修復活動が行われやすい)ことと自然に進むことの双方の条件を満たしている『日本語地図課題対話コーパス』を参考にし、地図課題に取り組む会話(情報提供者が情報追随者に経路を伝え、地図上に再現するもの。2者間で情報量が異なる。)を収録し分析する。なお、他者開始修復の目安として、上昇調を伴う差し戻しを調査対象とした。
●調査結果
聞き返しと比較すると出現数は少なく、鈴木ほか(2014)の結果と一致していた。
また、分析の結果より、差し戻しの発話者には偏りがあること、差し戻すことによって修復が開始され直前の発話よりも前に戻ること、差し戻しの引き金に種類がある可能性があることがわかった。加えて、会話者が「遡及的」に会話を進める時、直前の発話だけでなく先行文脈のより大きな流れも考慮に入れていることも言及できる。
今回の発表を通して、フロアの方々から様々なご意見を頂きました。ありがとうございました。そのコメントを紐解いていくと、用いる単語の区別や量的分析の側面、言語形式と相互行為という分類、差し戻す先の認定方法や機能との関連など、課題が改めて見えてきました。
今後は、上昇調以外の差し戻しも視野に入れながら差し戻しの実態を明らかにし、会話がスムーズに進むための要因を明らかにしていきたいと考えています。
本ゼミでの最後の発表を終え、ゼミのフロアの方々からの意見が大変貴重であることに改めて気付かされました。卒業研究に取り組むことはもちろん、ゼミでの議論にも貢献できるよう、より一層邁進していきたいと思います。ありがとうございました。