11/30・12/14(月)河本【レビュー】柳 彗政(2012)『依頼談話の日韓対照研究 談話の構造・ストラテジーの観点から』

2016年01月30日 12:25

 更新が遅れ、大変申し訳ありません。11/30、12/14のは発表のレビューです。

 今回の発表では、依頼表現の相違から見た日本語と韓国語の対照研究を扱っている柳(2012)の論文を使用しました。

 前回からの変更点としては、まず、調査方法を談話分析にした点が挙げられます。前回の論文は、単語レベルでの研究だったのですが、一単語を取り出す形式の研究は辞書的で、言葉の定義の比較を行っているような印象を受けました。発表者は、より実際的な会話などを対象としたい、と考えるようになり、今回本論文を取り上げました。また、比較対象を中国語から韓国語にした点が、もう一つの変更点です。普段学習していて話に実感が湧きやすいと思い、韓国語を扱っている論文を選びました。


 今回扱った論文の概要としては、日韓の依頼表現における相違を調査する、というものです。調査対象者は全て依頼者役を担当しており、話し手と聞き手との関係(依頼先が友達か先生か)、依頼要件の難易度(ノートを借りるよう頼むか資料を取ってきてもらうよう頼むか、など)の2観点を軸とし、学生同士の談話を収集しています。そして、そこで得られたデータを、『話段』という言語単位を用いた談話の構造と、ストラテジーの2つの方法から分析を行っています。

 その結果、談話の構造の観点とストラテジーの観点から、以下のようなことが言える、と筆者は述べています。日本語では、依頼者がはじめは依頼を引き受けてくれるかどうかに焦点を当て、付加的なことについてはあまり触れない、という特徴があり、一方で、韓国語は最初の段階から参加者同士で持っている情報を出し合い、充分な情報交換の後に被依頼者の応答が見られる傾向があります。つまり、依頼を行う際の依頼内容の情報提供において、日本語は「情報小出し」を、韓国語は「全情報提示」を重視していることがうかがえます。


 今回の発表では、一回目の発表で調査方法の妥当性について、二回めの発表では「話段」という言語単位に関してを中心に論文全体について、フロアの皆様からご意見を頂きました。その中で、自身が目標としている異文化コミュニケーションの相違の探求に向けて進んでいくためには、より心理学的研究に寄るべきではないか、というご指摘がありました。これまでそういった方面から論文を当たって見ていなかったので、今後はまず、そちらの研究を見ておこうと思っています。

 今回は発表前からばたばたしてしまい、すみませんでした。また、今後の調査につなげたいと早とちりしてしまい、二回めの発表がずれてしまったと後悔しています。しかし、発表を通して様々な見方や知識、アドバイスを頂けて、よかったです。

 みなさまありがとうございました。

お問い合わせ先

ことば実践研究会 kotobazissen@outlook.com