12/7(月).12/14(月) 川畑【レビュー】 村瀬俊樹(2009) 「一歳半の子どもに対する絵本の読み聞かせ方および育児語の使用と信念の関連性」.野田俊作(2007) 「語りなおしとしての心理療法」

2016年01月14日 11:39

 更新が遅くなってしまい、大変申し訳ありません。12/7.12/14発表のレビューです。


 今までの部活動での経験からコミュニケーションの重要性を強く感じており、人によって表情や声色は微妙に異なるけれど、ことばなら(国語科にいる訳だし)分析の対象になるのかなと思い、このゼミに入りました。特に親や教師などの指導者から子どもへのことばかけが子どもにどんな影響を及ぼすのかに興味があり、やる気を引き出すことばかけとはどのようなものか考えたいと思いました。たとえ同じ状況であっても、ことばかけ一つ違えば相手に与える印象は大きく変わると思います。そこで夏合宿ではことばかけに関する論文を読み進めるにあたって多く記述されていた「褒める」ことと「叱る」ことについての話をしました。


 また、「親から子どもへのことばかけ」に関連して「ブックスタート」という言葉を介することで生まれる親と子の交流を推奨する用語を見つけ夏合宿で話したところ、育児語について見てみてはどうかと意見を頂き、一週目では村瀬(2009) 「一歳半の子どもに対する絵本の読み聞かせ方および育児語の使用と信念の関連性」の論文を扱うことにしました。


 この論文では日本の養育者が子どもに読み聞かせを行う際に共感的ことばかけ志向を持っているということと、従来日本の親は受容的読み聞かせを行う特徴があったが近年その傾向が変わりつつあるということが書かれていました。論文内の分析法で統計学の用語が多く出てきたために、統計学についてみんなで学ぼうという形の発表となり内容に深く踏み込めなかったことが反省です。また、調査対象者が一歳半の子どもということで言語獲得の過程について勉強することも出来たのは良かったのですが、自分の興味範囲は乳幼児ではなく小学生以上のある程度言葉のキャッチボールの出来る年代であったために、発表の準備の途中で興味とのズレを感じる結果となってしまいました。


 一週目発表の際にフロアの方から「読み聞かせは語りことばであるから、コミュニケーションをとることばかけに興味があるなら話しことばにした方がろいのではないか」との指摘を受けたこともあり、再度考え直し新たに発表テーマを考えることにしました。


 そこで、夏の発表でも扱った「褒める」ことばかけに関する論文をいくつか読んだところ、「褒める」と「勇気づける」ことばかけを対比させているものを見つけました。その論文では「アドラー心理学」について書かれており、その心理学によると「褒める」には上下関係が、「勇気づける」には共同的な対等関係が伴うとされていました。褒めることばかけも時には否定的なとらえ方をすることがあるのは、子どもがこの上下関係に反発心を起こしたからなのかなと思いました。「アドラー心理学」の考えを用いることで子どもの思考を汲みとり状況に適したことばかけが出来るようになるのではないかと考えたことと、その心理学と言語学を結び付けるような論文であったことから、二週目発表では野田俊作(2007)「語りなおしとしての心理療法」を扱うことにしました。


この論文では、クライアントの話した内容の表層構造を捉えた上での問いかけとしてのことばかけを行い、それによってクライアントが語りなおすことで新たな発言が生まれ、それまでの悩みをクライアント自ら解決の方向に向かわせることが出来るのではないかということが書かれていました。また、個々の単語が他の単語を排除することによって成り立つ連想関係と文の中での語と語の変換関係を語り手と聞き手が共有出来れば、語り手が意味することは正確に伝わるという考えから、治療者の役割はクライアントの使用する言葉の構造を明らかにすることだということも書かれていました。


 発表の際にはフロアの方にも「アドラー心理学」に興味を持っていただくことが出来、いくつか関連する論文も紹介していただきました。今回勉強したことを今後自分の研究に活かすとしたら、治療者を教師に、クライアントを子どもに置き換え、学校教育における「教師と子どもの相談場面」で援用できるのではないかと考えています。「子どもの悩んでいる姿を見て何かことばをかけたい。しかし一方的に自分の考えを押し付けるようなことばかけでは悩みは解決しないだろう。」そのような場面でこの語りなおし理論を使うことで、子ども自らが悩みを解決する方向に導くことが出来るかもしれないと思いました。


 長々と書いてしまい、申し訳ありません。初めての発表ということでとても緊張していましたが、フロアの方々からたくさん意見を頂き勉強になりました。個人の興味が異なるからこそ、毎回のゼミで学ぶことが多いなと感じています。

 ありがとうございました。


 


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