5/15.29 川畑 【レビュー】「思考の言語化が洞察問題解決に及ぼす影響に関する実験」

2017年06月12日 00:54

報告が遅くなり、大変申し訳ありません。

春学期一回目発表の川畑です。


今期は春ゼミ含め、三回発表させて頂きました。実験テーマが絞り切れなかったため、春ゼミでフロアの皆さんからたくさんのご意見を頂き、再度実験テーマを考え直しました。その結果、今期も「思考の言語化に関する実験」を行うことにしました。思考の言語化を問題解決の観点から見る点は昨年の発表と共通しています。


言語化と問題解決に関する論文をいくつか書いており、この分野の中心人物の一人と思われたことから、今回の発表では清河(2010)「思考の言語化が洞察問題解決に及ぼす影響の検討―言語化の方向づけと問題の性質に着目して―」を扱いました。昨年実験をして上手くいかなかった点として、問題が難しすぎたことが挙げられ、Tパズル以外の問題で実験が行われていたことも理由の一つです。自身の興味とずれるところは適宜条件を調整しました。今回も、実験中の観察記録とビデオから分析を行っています。


自身の昨年行った実験から変更した点を以下にまとめます。

〈主な変更点〉

・問題をタングラム(練習問題としてマッチ棒問題)にしたこと

・群構成を(A反省的言語化発言群.B反省的言語化記述群.C無関連言語化記述群)の三群にしたこと

・反省的言語化の内容を、自身の前半の取り組みの振り返り→よくなかった点についての二段階で行ったこと

 今回の実験では以下の二つの仮説を立てました。

・反省的言語化をした群の方が、より多角的な視点から問題を解く様子が見られる。また、何らかの発想が転換される様子が見られる。

・記述群(B)より発言群(A)の方が、直後の取り組みで反省内容を活かした動きをする。


 結果として、正答したか否かでは各群に差は見られませんでした。しかし、観察記録とビデオ分析から、前半とは違った考え方やピースの組み合わせ方をする被験者は複数いたため、仮説の一つ目にある「発想の転換」が起こった可能性はあると言えるでしょう。

 課題点は、前後の試行の変化が本当に言語化によるものなのか不鮮明な点です。被験者と問題との相性も関係するため、いくら条件を三群で同じにしても個人の差を無視できない状態にあります。二回目発表では被験者一人に対して全員初めはC群条件で実験し、なお正答できなかった人に対して続けてA・B群条件での実験をするという案も出しましたが、問題の慣れに関する指摘があり、今後さらに実験条件を見直していく必要性を感じました。また、より良い分析方法がないか先行研究をもとに探そうと思います。