5/22,6/5 小野寺【レビュー】繰り返しを伴う遡及的発話による修復開始と修復連鎖の調査・分析

2017年06月12日 15:30



小野寺です。

先日行いました前期発表について報告させていただきます。



今回の発表では、「遡及的発話」「繰り返し」「修復」がキーワードとなる発表を行いました。


1年生の時から談話や会話といった大きな単位に興味を持ち続け、特に「会話の流れ」に着目してきました。今回の発表では今一度「会話の流れ」のどのような点に興味を持っているのか改めて考え、上記のようなキーワードを基に調査をすることとしました。



私が考えるスムーズな会話の流れの要因には、話題転換・話者交替が滞りなくなされていること、会話が途切れていないこと、そして会話が一方向に進んでいることが挙げられます(話題転換に関しては前回までの発表で扱ってきました)。


しかし、実際には発話連鎖を繰り返しながら会話が進んでいても会話が一方向に進んでいるとは限らず、会話の流れが前に戻るような箇所が存在することも考えられます。その際、「遡及的な発話」を伴って修復しながらも会話は滞りなく進んでいるように見えるのではないか?と考えたことから、遡及的発話に始まる修復を今回の調査対象としました。


一口に「遡及的発話」と言っても多様な形があるため、以前の発表で実際に録音した会話データを参考にし、今回は先行発話の繰り返しを伴う遡及的発話に絞って調査を行いました。



串田(2007)を基に行った1回目発表のフィードバックでは、主に3者会話の規定・修復の認定・会話の流れの形式についての意見やアドバイスをいただきました。そこで、修復に関与する人物の数でデータを分ける、先行研究の定義を援用する、会話進行の型を分析の観点として取り入れるという3点を付け加えて調査に臨んだ次第です。



以下、調査概要です。



【調査概要】

●調査方法

繰り返しを伴う遡及的発話による修復開始とその後続く修復連鎖について分析する。

その際、『千葉大3人会話コーパス』を用いた(整った環境での録音、先行研究でよく扱われているデータ、沈黙が少ない3人での雑談という特性からデータとして選択した)。繰り返しを伴う遡及的発話の認定はSuzuki(2010)の「聞き返し」の言語形式を、修復の認定は主に榎本・岡本(2010)を援用した。


●調査結果

修復の繰り返し、「修復開始―修復―承認」の構成、3者会話での会話内容の重複など、概ね先行研究で言及されているような結果が得られた。修復に関与する人数を問わず修復連鎖前後の会話の流れの形式が変化していなかったこと、3者が修復に関与する会話のみで「修復開始―修復―承認」という承認の型が現れていたことが特徴的な点であった。



2回目の発表では、主に承認の言語形式・話者や、コーパスデータの形式についてフロアの方々から意見・アドバイスをいただきました。承認に関しては、修復の次発話から発話が受理されているか否かで判断しましたが、明確な言語形式があるわけではないために自分の中での定義づけが甘い分析となっており、今後改善していく必要がある大きな反省点だと考えます。また、Suzuki(2010)の「聞き返し」の8種類(うち先行発話の繰り返しを伴うものは4種類)の言語形式のうち、1種類に絞って遡及的発話の認定を行ったこともあり、データ数が少なくなってしまったことも分析に影響していることが予想されます。



今後は、「聞き返し」の他の言語形式に続く修復連鎖、また強弱の段階を踏んだ修復連鎖といった観点から研究を進めていけたらと考えています。また調査対象とする会話データも、会話のスムーズさ・実際の録音も視野に入れながら、まずは広く先行研究を概観していきたいと思います。



最後に...自己分析すると、私は定義が難しいもの(先行研究でも明確に定義がなされていないもの)に興味を抱く傾向にあるようです。それゆえ研究の手法を決める段階等で苦心することも多いですが、同時に興味のあることを研究対象とすることができているのだという実感も抱いています。3年生になり、卒論の二文字も見えてきていますが、研究に臨む姿勢も大切にしつつ研究を進めていけるよう努力していきたいです。


小野寺